・・・夢うつつ・・・

2/2
前へ
/17ページ
次へ
走って駅に着いた頃は、電車の時刻ギリギリだった。 雪のせいか車内はがら空きで、ホームにもあまり人影はなかった。 益々酷くなる頭痛に耐えきれず、バックに常備されている鎮痛剤を飲んだ。 積雪の為、運行が遅れるとアナウンスが流れたのをぼんやりと覚えている。 「眠い…薬のせいかな、あったかいな…」 ぼそっと呟くと、私は眠りについてしまった。 暖かい車内と薬の作用。何より、あの家から離れた安心感があった。 ・・・・・・・・・・・・・・ 足元まで真っ暗な闇の中。鮮やかに浮かびあがる桜の木。 舞散るのは花びらか…粉雪か… 《…狂喜の桜》 誰かの声が響く。 〈狂喜?狂気じゃなくて?〉 聞き返すのは…私? 《狂喜の桜。こんな中で本当の美しさを出すのか…こんな中でしか、本来の姿を出せないのか…》 いつの間にか隣に立つ彼は、彼は… ・・・・・・・・・・・・・・ 「アキっ!?」自分の声に目が覚めた。 『どうしました?』車掌さんは驚き顔だった。 恥ずかしさで顔をあげられず、うつ向いたまま私は「すいませんっ何でないです!!」と言い頭を下げた。 車掌はすぐに『そうですか?もうすぐ次の駅ですよ』 そう言いながら笑顔で次の車両へと入って行った。 どれ位眠っていたのか、いつの間にか電車は動いていたらしい。 「次の駅!?…良かったぁ」車掌さんの言葉にはっとし、停車駅を確認した。 どうやら乗り過ごさずにすんだらしい。 私はホッとすると窓の外を眺めた。 いつの間にか雪はやんでいた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加