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自分の記憶の底に押し込めていたモノが少しずつ、殻を壊しはじめていた。
始まりは、もう10年も昔の話。
ほとんど通わなかった中学の卒業式を終え、解放感よりも安心感があった頃だった。
進学への希望もなく、おろしたての制服を目の前に、ため息と憂鬱さしかなかった。
腕にはいくつもの傷痕をつくり、満たされることのない孤独感で息が詰まりそうな日々。
父は愛人のもとへ、一月に何回顔を見たのか…会話はもう何年も無かった。
そんな父への憎しみを露に母は酒に溺れた。酔っては父の写真を切り裂き、あたりどころは私の元へ…
母はヒステリックに喚き、空の酒瓶に埋もれていた。
私の身体に痣の数は数えきれない程、骨折は軽い物なら自分で治療ができる。
いつも朦朧とする意識の中で目覚めないことを願っていた。
清々しい朝の空気は絶望の匂いがした。
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