・・・追憶・・・

2/2
前へ
/17ページ
次へ
自分の記憶の底に押し込めていたモノが少しずつ、殻を壊しはじめていた。 始まりは、もう10年も昔の話。 ほとんど通わなかった中学の卒業式を終え、解放感よりも安心感があった頃だった。 進学への希望もなく、おろしたての制服を目の前に、ため息と憂鬱さしかなかった。 腕にはいくつもの傷痕をつくり、満たされることのない孤独感で息が詰まりそうな日々。 父は愛人のもとへ、一月に何回顔を見たのか…会話はもう何年も無かった。 そんな父への憎しみを露に母は酒に溺れた。酔っては父の写真を切り裂き、あたりどころは私の元へ… 母はヒステリックに喚き、空の酒瓶に埋もれていた。 私の身体に痣の数は数えきれない程、骨折は軽い物なら自分で治療ができる。 いつも朦朧とする意識の中で目覚めないことを願っていた。 清々しい朝の空気は絶望の匂いがした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加