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逃げるように自分の部屋へと戻ると、待っていたかのように携帯が鳴った。
「はい。」<もしもし?おはようサクラちゃん。今日の10時に、大丈夫かい?>
「はい、おはようございます。10時ですよね?大丈夫です伺います。」
<そう良かった、じゃあ待ってるね。>
「はい失礼します。」
電話を切った私の心は、少し楽になっていた。
電話の主は私の主治医の斉藤先生。
私の拠。
10時までにはまだ時間があったが、私は早々に出掛ける支度をし階段を下りた。
玄関の開く音と共に手を擦り合わせて母が入ってきた。
「あぁ、寒い!雪降って…」
私を見るなり凍りつく母。
いつもの事、既に心も痛まなかった。
「今日…診察?」
母がやっと絞り出した声は震えていた。
「うん…行ってきます。」
私は足早に玄関を出た。後ろで母が言った言葉は耳に入らなかった。
早く、早くこの場を離れたい!焦る気持ち、押し迫る圧迫感に吐気がした。
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