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一瞬の内に脚を払われると、後は腕力にものをいわせてキョウカは直弥をベッドへと投げ飛ばす。
投げられた直弥の方は、ちょうど背中から落ちてたいした痛みを感じることなく起き上がる。
「キョウカ、いきなり何するだぶわぁ!?」
文句を言おうと口を開いた矢先、突如として飛来した何かに口どころか顔を覆われてしまう。
息苦しさを感じるよりも先に、甘い香りが直弥の鼻孔を満たしていく。
香水のように創られたモノではなく、けれど香水よりも甘美な雰囲気を含むそれはどうやら顔を覆っている布から、正確にはキョウカが着ていたセーターから漂うものだった。
最近のキョウカは、室内を洋服で過ごすことの方が断然多い。現に今もグレーのセーターに細目のジーンズとラフな格好でいたはずだ。
だが、そんな事は今はどうでもいい。重要なのは着ていたはずのセーターが直弥の手元にあるということ。
――――それはつまり……
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