2.不安の音色

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 キョウカは帰ってくる直弥を待ち、お茶を飲もうとお湯を沸かしていた。  時計の針は午後三時を指そうとしており、一服いれるにはちょうどいい時間帯だ。  今日は冬休み前最後の登校日、明日からは二週間程の休みが続き直弥との時間が大幅に増える。  だというのに、キョウカの気分はどこか憂鬱だ。  今も、どこか物憂げにコンロの前で立ち尽くしている。  感情の起伏は激しいキョウカだが、余りマイナスの方向へと矛先が向かうことは少ない。  そんな彼女が気を落としているのにはもちろん訳がある。  二ヶ月程前に届けられた母親からの伝言、それがキョウカの憂鬱の原因だ。  いや、正確には伝言そのものではなくその内容、つまりは帰ってこいというそれに起因するのだが、とにかくキョウカの悩みの種になっている。  他の有象無象ならともかく、母親――茨木童子の言伝てとあっては無視出来ない。
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