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ソレはたゆたっていた。
光は届かず、風も流れぬ暗闇に溶けるようにして身を任せていた。
一体どれくらいの時をこうして過ごしてきただろうか?
変化のない、ただ過ごすだけの生にも今はもう何かを感じることはない。
最初こそ、自分をこんな目にあわせた存在を憎んでばかりいたが、その感情すら希薄になってしまっていた。
だが、決して全てを投げ出した訳ではない。
いつか、いつの日か、必ず外に出てみせるのだと。これだけは未だに確立された意思として残っている。
――だから、自分を阻んでいる壁が薄くなり始めているのを感じ取った時、何百年かぶりに笑っていた。
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