1.始まりはいつも

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「何だ、出掛けてるのか?――まぁ、ゆっくり休めるならそれでいいか」  一人納得するように呟くと、自室への扉に手を掛け躊躇することなくドアノブを回す。  自分の部屋に入るのに躊躇も何もないとは思うが、とにかく入ってしまったのだ。 「キョウカ?」  この時期は日が落ちるのが早い為、すでに部屋の中は薄暗い。  にも関わらず、部屋の明かりを点ける事なくいないかと思われたキョウカは直弥の机に座っていた。  パソコンを点けているらしく、液晶ディスプレイの明かりがぼんやりとキョウカの顔を照らしている。  もっとも、後ろ姿なのでその表情まで窺い知ることは出来ない。  ――ただ、イヤに空気が重く、どんよりとしている。  どうやらこの空気の原因は彼女らしいが、直弥のいない時に何かあったのだろうか?
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