幼なじみ

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本当になあ、気も遠くなるよ……。 孝弘「なんてこった……」 再び、いや、三度……何度目になるか分からないが、オレンジの点線を見やる。 孝弘「なんなんだよ、これは……」 何度同じ台詞を繰り返したか分からない……が、分からないのはむしろ目の前の状況なのだ。 ああ……憂鬱だ。そんな漢字書けねーよ。 まさかそんなことになっていた とはなぁ……。 孝弘「ありえねー……」 ですの少女が去ったあと、俺は駅前で頭を抱えた。 ありえない、ありえない、と口に出して見ても、このオレンジの点線が消えるわけもない。 ガキのころから引っ越しばかりしていたから、新しく住む町に過剰な期待を持つようなことはしなかった。 でも、やっぱり生まれ故郷に帰るからには、他の町と違って懐かしさと期待があった。 それがこんな状況になっているなんて……。 今思い返せば、この町での思い出は綺麗なものばかりだったような気がする。 ガキのころの記憶だからおぼろげなイメージとしでしか思い出せないけど……。 平和で、穏やかで、でもちょっとわくわくして……。 そんな楽しい想い出しかない……ような気がする。 記憶の中のことだから、もちろん美化されている面もあるだろうけど……。 そりゃあさ、時の流れがいろいろなものを変えてしまいことだってあるだろうけど……。 でも、こんなひどいことなっているなんて思ってもみなかったぜ。 せめて……。 せめて友だちは……。 せめて友だちはあのころのままで……いてくれてるだろうか……? 町や大人たちが変わってしまったのだとしても、せめて友だちだけはあのころのままでいてほしい。 そんなことを思った。 孝弘「……」 ガキの戯事かもしれない。 そもそも俺だってまだガキだ。 そのつもりだ。 だから、捨ててはいけないものを、絶対に捨てたくなかった。 目を閉じてみる。
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