35人が本棚に入れています
本棚に追加
雨が降っていた。
六月の梅雨独特の、湿りのある大気が満ちていた。
道路に倒れたその子は、倒れたもう一人の子を見つめる。
「だから…」
雨に濡れた地面が赤く染まり出す。
「だから言ったのに…」
先程まで笑って遊んでいた友達が、身動き一つしない。
「どうして…信じてくれなかったの…」
その子は泣いていた。
…見えたの。
赤信号なのに、車が止まらないこと。
跳ねられて…あの子が死んじゃうのを…。
止めたのに…あの子は横断歩道を渡り始めてしまった。
止めに入って…
ああ、でも…結局、跳ねられちゃった。
「ごめんね…ごめんね…」
謝りながら、その子は静かに目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!