6月6日

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そこは街を見下ろす、展望台。 夜景が綺麗なことで有名な、いわゆるデートスポットであった。 周囲には車が数台止まっており、中から眺める人達もいれば外に出て夜景を眺める人達もいる。 「綺麗だねー」 「あ、あそこ大学じゃない?」 「本当だ。ねえ、そういえば聞いた? 今日大学の建物が急に崩れちゃったんだって」 「……おいおい、そんな話しをここで始める気か?」 「それもそうだね。じゃあ、そろそろ帰ろっか?」 「うん」 会話をしていた二人は車に乗り、街へ帰っていった。 そんな車を遠目に見つめ、今が昼であれば誰かが引き止めに来そうな目をした男がいた。 東城一魔。 全国各地に秘密裏に存在する魔法使いの組織『麒麟の右目』の頭首の息子にして眼下に広がる街を担当する小隊長である。 そんな彼が、何もかもが嫌な気分になっているのには訳があった。 昼間に自分の部下がもう確実に死んでしまうと言われ、無力感を味わった。 そして自分が師と仰いだ人物が、自分の“正義”という信念と真逆の存在であり、あろうことか父親までその企みに参加していた。 いや、今のは家族贔屓な言い方だ。 正確には父親が彼らを主導している。 中心人物だったのだ。 そして、そんな彼らを止めたい自分だったが、自分では師にもかなわない。 さらに父にいたっては戦いにすらならないだろう。 一方的に殺されるだけだ。 しかし、そんな師を部下はいとも簡単に倒した。 一魔の胸の中では大きな無力感と、否定したい嫉妬心が渦巻いていた。
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