22人が本棚に入れています
本棚に追加
どこにでもある
一軒の寂れたバー。
看板等なく薄汚れた街角にある。
店内は見た目通りのくたびれ具合。数人の柄の悪い男達が酒に酔っている。
ドアが静かに開き先程の男が入る。
「お前かディーゼル」
その男―ディーゼル―と呼ばれた男は綺麗に剃り上げられた頭にヤギ髭。無駄に良すぎる体付きに厳つい顔。
ディーゼルは彼を呼んだ男の前のカウンター席に座る。
「ビールくれ」
上着を脱ぎなから告げる。
60を手前に控えたメタボリックな親父―バーのマスター―は
ディーゼルにバドワイザーを渡す。
丸太の様な腕に両肩にはトライバル。
タンクトップから覗く背中の様々な絵柄のタトゥー。
「仕事は済まして来たのか?」
「上々だ。親父。今頃頭に穴空けてお月様でも眺めてるさ」
ディーゼルは愛煙のラッキーストライクに火を着ける。
「ヤツはちっとばかしヤク捌いてるチンピラだ。どうってことはない」
「今月は厳しくてな。少しでも稼ぎが欲しいだけだ」
外では断末魔の叫びが聞こえる。
それを誰一人として気に止める者は居なかった。
「明日には金が入る。ちゃんと始末してたらな」
「オレがそんな…」
ディーゼルの言葉を遮る様に入り口から一人の男が流れ込んで来た。
「誰が助けてくれ!」
最初のコメントを投稿しよう!