圧倒

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二台のマシンがうめきを上げて走り出す。 一歩踏み出したのはシルビアだった。 バランスのよいシルビアはやはりギアの噛み合わせもよく、トラクションもまた十分である。 一歩ミニクーパーは太いタイヤから白煙をけたたましく出して猛々と加速していく。 その差は10mというところだろうか。 そこから40m近くストレートが続く。 スピードメーターの針が更に右に上がっていく。 周りの景色が灰色のドームに変わっていく。 「加速では勝てたか…」 安心する高梨。 だがその刹那、想像を絶する光景を見る。 「…そんな……」 バックミラーにライトが四つ映る。 揺れるインパネ、軋むロールバー。うめきを上げてミニクーパーが背後から遅いかかってくる。 コーナーが見えてくる。 軽く左に曲がった後、右にかなり切れるヘアピンだ。 二台のマシンは一つしかないレコードラインを争って飛び込む。
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