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泣くことが出来ないお人形さん
ひびわれた心は弱音こそ吐けども涙は出ないのでした
彼女は口を開きます
『誰か、私を見て。泣かせてちょうだい?』
それは届けども報われぬ願いでした
幾人の人が彼女を癒そうと声をかけ、教えさとします
それでも彼女は泣けません
悲しい悲しいと人々が言う物語を読んでみました
しかし彼女は泣けません
ぽろぽろと心が流す雨は心の中でのみ降り続けます
あるとき、彼女は思いました
『泣けないのに努力をするのは無駄なのかもしれない』
それから彼女はやめました
悲しい物語は自分を更に悲観させる、
私は現実を見るべきだと
そして彼女は、泣くことを諦めた代わりに歌を歌いました
暗くなった夜、満天の星空の下原っぱで
泣けないことを悔やむように、
消えていった涙を惜しむように
『貴方はどこにいるのでしょう』
『流れ星の中に貴方たちはいるのですか?』
彼女は歌い続けました
それは、
涙達、消えていったそれら全てに向けた鎮魂歌
流れた星が彼等ならいいと願いながら、彼女は歌います
ずっとずっと、終わりのときがくるまで彼女は歌い続けます
ずっと、ずっと
彼女の足元には、一滴の雫だけがきらきらと輝いていたということです
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