詩-ウタ-

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
泣くことが出来ないお人形さん ひびわれた心は弱音こそ吐けども涙は出ないのでした 彼女は口を開きます 『誰か、私を見て。泣かせてちょうだい?』 それは届けども報われぬ願いでした 幾人の人が彼女を癒そうと声をかけ、教えさとします それでも彼女は泣けません 悲しい悲しいと人々が言う物語を読んでみました しかし彼女は泣けません ぽろぽろと心が流す雨は心の中でのみ降り続けます あるとき、彼女は思いました 『泣けないのに努力をするのは無駄なのかもしれない』 それから彼女はやめました 悲しい物語は自分を更に悲観させる、 私は現実を見るべきだと そして彼女は、泣くことを諦めた代わりに歌を歌いました 暗くなった夜、満天の星空の下原っぱで 泣けないことを悔やむように、 消えていった涙を惜しむように 『貴方はどこにいるのでしょう』 『流れ星の中に貴方たちはいるのですか?』 彼女は歌い続けました それは、 涙達、消えていったそれら全てに向けた鎮魂歌 流れた星が彼等ならいいと願いながら、彼女は歌います ずっとずっと、終わりのときがくるまで彼女は歌い続けます ずっと、ずっと 彼女の足元には、一滴の雫だけがきらきらと輝いていたということです
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!