出会い

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亜希ちゃんと出会ったのは、私がまだ19歳の時。 当時、美容師見習いだった私は出来る技術が限られている中で、シャンプーは同期の誰よりも上手だと自信があった。 よく指名を頂いていたからだ。 亜希ちゃんも、シャンプーは必ず私を指名してくれていた。 亜希ちゃんは、当時30歳。 独身、彼氏なし、仕事は秘密らしい。 いつも小奇麗な格好をしていて、シャンプーとセットをして出掛けてゆく。 来ると毎回、スタッフがおつかいに行くかわりに、他のお客様を含め店にいる全員にドトールのコーヒーをご馳走してくれる。 お会計はいつも三千円程度だが、壱万円を差出しおつりは必ず受け取らない。 初めて私が亜希ちゃんのレジを担当した時、なんとかおつりを返そうとした。 「一度いらないって言った物をどんな顔して受け取るの、もう来て欲しくないって言うんだったら受け取るよ。」 そう言ってにっこり微笑んだ。 洒落た断り方するなぁ。 そう思った私は、返そうとするのをやめた。 その代わり、でもないけれど人遣いは荒い。 でも、悪意は感じない。 何とも言えない彼女独特の雰囲気があり、俗に言うセレブをもっと親しみやすくした、言うなれば「プチセレブ」という様な感じの人だった。 この時点では私にとってお客様の中のひとりでしかなかった。
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