162人が本棚に入れています
本棚に追加
その少年には手を取るしか選択肢は無かった。
それは彼が敗者だから。
手にした力は壊され
守りたい存在はすべて奪われ
信念は踏みにじられた。
『未来』
英雄の言うそのワードが彼の心を深く傷つける。
彼自身その“未来”を目指し、
それこそ全身全霊を懸けて手に入れようとしてきた。
それを目の前の英雄は何も失う事もなく彼の手から奪ったのだ。
「過去に捕らわれるのは止めろ!」
「未来を作るのは運命じゃない。」
脳内でリピートされる声。
自然、少年の手に力が入る。
思い出すのは金髪の親友と少女。
自身の身が長く保たないことを知って尚も信じる“未来”の為に命を懸けた親友。
薬物に侵され尚も助けと感謝の言葉をかけた少女。
(レイ、ステラ…ごめん。)
頬を伝う涙。
彼はこの瞬間に全てを失った。
最初のコメントを投稿しよう!