act 0 堕天使の堕ちた先

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その少年には手を取るしか選択肢は無かった。 それは彼が敗者だから。 手にした力は壊され 守りたい存在はすべて奪われ 信念は踏みにじられた。 『未来』 英雄の言うそのワードが彼の心を深く傷つける。 彼自身その“未来”を目指し、 それこそ全身全霊を懸けて手に入れようとしてきた。 それを目の前の英雄は何も失う事もなく彼の手から奪ったのだ。 「過去に捕らわれるのは止めろ!」 「未来を作るのは運命じゃない。」 脳内でリピートされる声。 自然、少年の手に力が入る。 思い出すのは金髪の親友と少女。 自身の身が長く保たないことを知って尚も信じる“未来”の為に命を懸けた親友。 薬物に侵され尚も助けと感謝の言葉をかけた少女。 (レイ、ステラ…ごめん。) 頬を伝う涙。 彼はこの瞬間に全てを失った。
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