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抗うことなく体に刻まれていく
傷
傷
疵。
思いが籠められたその疵痕は、浅い物も消えることなく彼の体に遺っていく。
旅を始めて一年経ちインドに到着した頃には体中が疵だらけだった。
髪は伸びて背中まで伸びた。
幼さの残っていた顔は今では青年の顔になっていた。
それでも彼は旅を続けた。
それは贖罪。
自身が負けたが故に苦しむことになった者達への謝罪。
死ぬことすら許されない、重い十字架を背負った旅。
そして更に一年。
たどり着いたのは極東の地。
旅の終着駅。
そこで彼に起きた出会い。
それは運命だったのかもしれないし、必然だったのかもしれない。
だがそれは彼の未来を変えるものだったのは確かである。
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