act 1

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2年間生身で世界を回った彼は気配を感じ取れるようになっていた。 ザフトのエースとしてMSを駆っていた頃には感じ取れなかった感覚が、 今ではひしひしと伝わる。 「くそっ…!!」 気付いた時には走りだしていた。 向かう先は薄暗い路地裏。 街灯が微かに照らすだけの道を駆け抜けていく。 少しずつ耳に入ってくる物音。 聞こえてくる声。 (男4人に女1人 …襲われてる?) 瞬間、彼にスイッチが入った。 “守る”という脅迫観念が脳を支配して体中に緊張が走る。 この路地裏では誰も気付けない。 守れるのは自分だけ。 「あっ…いやっ……助けて…」 そして彼の耳に彼女の悲鳴が届いてしまった。 瞳から光が消える。 脳裏に情景が360度映し出され、思考が急激にクリアになる。 ぎりっ、と歯を噛み締めて、彼は現場に躍り出た。
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