朝イチのプロローグ

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日本離れした西洋風の町並みに、豊かな自然。 大地を撫でる風は、何処と無く懐かしく、陽光を操った光のアートは、近代的なイメージをそそる、そんな町。 観光地にもなりそうなこの町を、金髪の少女が全力で突っ走っていた。 パン屋の前を駆け抜ければ、矢七(やしち)おじさんのヅラが飛び、ゴミ置き場の前を通れば、カラスがアホーと馬鹿にする。 人工的な金色を振り乱した姿は、まるで般若のよう。 荒れた肌にかかるパサパサな髪を掻き上げながら、少女は誰もいない空に叫んだ。 「遅刻だ―――っっ!!」 高校三年、櫻井 亜理砂(さくらい ありさ) 今、人生で50から60回目の大ピンチ。 遅刻である。 しかもテスト当日に。 必死に走り、学校が見え、努力が実ったと小さくガッツポーズしたが、その瞬間、 キーンコーンカーンコーン 残念、時は既に遅し。 テスト開始のゴングは高らかに鳴り響いた。 「う……そ」 ヘナヘナとへたり込む亜理砂。 校門の前で1人汗だく。 そこに、警備員のおじさんが通りかかり、亜理砂を見ると 「家の学校で何しとるんじゃ! ヤンキーなんぞ絶対入れんぞ」 「いや、私生徒だから、つか誰がヤンキーじゃゴルァ!!」 「お前しかいんじゃろ!」 このストーリーは、ヤンキー少女亜理砂と愉快な仲間達の、いつも賑やかな学舎から始まる。
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