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「私ラストまでなんですけど、変わってくれませんか?」
「えっ、…………」
「ダメですか?」
フサフサの睫で縁取られた瞳で見つめられる。
「いや、大丈夫だよ。」
期待していた分の落胆は大きいもので、明らかにさっきより落ちたトーンで山田は答える。
「よかったぁ。急に彼氏が会おうって言ってきて。今日は練習もないらしいんですよ。」
山田の様子の変化に気付いていないのか、早く帰りたい理由を嬉しそうに語る。そして、恥ずかしそうに下を向きながら、ハニーゴールドの髪を耳にかけた。
「バンドマンの彼氏?良かったね」
言いながら、山田の気持ちは持ち直していた。
ゆかりが嬉しそうなのだ。
それだけで山田も嬉しかった。
そもそも、彼はゆかりと付き合えるだとか思っていない。
彼女はとても可愛くて、人気がある。
山田だって女の子の知り合いがいないわけではない。
むしろ多い方だ。
だから分かる。
このように、ゆかりのような子は例外なく外見か内面、もしくは両方が魅力的な男と付き合うのだと。
「このお礼は必ずします。ほんとにありがとうございます。」
そして、ゆかりは良い子だ。
ワガママな部分もあるけれど、それも含めて魅力的だと思うのは山田だけではなかった。
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