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ウィーン クーラーの効いた店内から暑い外へ出て行く客を目線だけで見送る。 山田は周りの店員を見回した。 この本屋では「ありがとうございました」なんて言う店員なんていない。 それは怠けているからではなく、それがこの『癒し屋』のスタイルなのだ。 この店には緩やかに流れる音楽と客の控え目なおしゃべりがあればそれでいいのだ。 店員はインテリアにすぎない 店長はいつもこう言っている。 もちろん業務も行うが、この店で働くために一番大事なことは店に溶け込むことだ。 普通なら、店員が店を作っていくのだが、ここでは逆だった。 現実離れした空間 山田の第一印象はまさにそれだった。
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