貴族

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本部に戻り、報告を済ますと、フィーラルとデルタに新たな任務が舞い込んできた。 「じゃあ、気を付けろよ」 くしゃくしゃと頭を撫でられながら、その言葉に頷き、フードを深く被り直し、転移する。 デルタとはまた別の任務である。 今回は【緋月】との共同戦。未だ続く、小さな組織同士の抗争が想定していたより、被害が大きく出た。此方の被害は大きくはない。…が、このままではこれ以上の被害が出る可能性がある。 そこで下された指令が、それの鎮圧及び、逆らうものの、殲滅。 向かうのは、戦場だ。 転移した先は、血や煙や脂の臭いに溢れていた。恐らく慣れていない者ならば、吐くだろう。 「【鴉】の者で、相違ないな?」 低い老成したような男の声が此方に向かって放たれた。 「…そっちは?」 どうやら【緋月】の構成員の様だが、信用する気は更々無い。【緋月】と協力するのは、現時点で組織同士の実力が拮抗し、争ったところで時間の無駄。利害が一致している今だからこそ、お互いに協力体制をひいているに過ぎないのだ。 「【緋月】のものだ。しかし、其方が寄越したのは、貴殿だけか?」 そいつの後ろには数人の構成員。 「そうだよ。」 素っ気なくそう言えば、ざわりと【緋月】の構成員が揺れた。
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