帰宅

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「……。」 目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。任務を遂行するに、丁度良い時間。 ふ、と隣に目を向けると、すぅ。と寝息を立てるデルタがいた。 「…。」 なるべく気配を断ちソファーから降りたが、やはりデルタは起きてしまった。 「行くのか…?。」 暗闇の中で任務用のコートを羽織り、こくりと頷けば、デルタはゆっくりと此方に近づき、優しく言う。 「行っておいで。」 その声は優しいのに、何処かに悲哀を含んでいた。 「…うん。」 マスターが後から指定した時間は午前零時。 今は11時半。 上々だ。 転移魔法で目標である組織の建物の屋上へと、降り立った。 ぐるりと辺りを見回すが、あの新人はまだ来ていないらしい。 まだ時間ではないが、それまでに来なかった場合、午前零時になったら一人でも任務を遂行する。 「…。」 それ迄は気配を完全に断ち、来るであろう相方を待つ。 その間、ぼんやりと夜空を眺めてみる。 ――――妙に、蒼白い月が顔を覗かせていた。 「…。」 それからきっかり、午前零時になった時、奴は現れた。 フードから覗くその瞳は不満で一杯の様だ。 余程、僕が気に食わないらしい。若しくは僕と組むのが。 そんな事はこっちだって願い下げだが、命令だから従う。 それに不満は無いし、気にしても意味は無いので、さっさと終わらせてしまおう。 「行くよ…。」 「言われなくとも。」 憎まれ口を聞きつつ、任務にはいった。
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