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【ラヴィリア】の壊滅から数週間ほどたった頃、また任務が入った。
「―――って事で頼めるかな?」
「……わかった。」
今度の任務は、“貴族”の護衛。
貴族と言うのは、この【ドレフィス】という世界で人間対人間、人間対多種族、又は人間対魔族等との戦争で名を上げて、特別な地位を得たもの達の事。
僕は貴族嫌いだけど。
何でかって言うと、貴族は魔力が多くて武術に秀でる者達がほぼ大部分を占めているんだけど、その所為か魔力の量が少ない―――所謂、平民と呼ばれている人間や獣人、エルフ等を見下す傾向がある。
多分、人より少し強いから、そんな歪んだ考え方が生まれたんだろうけど。
その、考え方がきらい。
だって、努力次第で貴族なんて易々と超えられる。
それに僕等みたいな裏の社会で生きている者達にとって、貴族を屠る事なんて、どの暗殺任務より容易い。
「フィーラル。」
「なぁに?。」
マスターに呼ばれて意識を其方に向ける。
「やっぱり止める?。フィーラル貴族大っ嫌いだよね?。」
「問題はないよ。」
それを聞いて、すこし微苦笑した。
マスターは僕の心情を汲んで言ったみたいだけど、そんな気遣いはいらない。
「そ?。実際さ、貴族にとって大枚はたいて依頼したみたいだけど、暗殺任務の報酬に比べたら、端金なんだよねぇ。」
それは【鴉】にとってそれ程利益は無い。と言う事だ。
「それは、“表”と“裏”の折衝役も、兼ねているの?。」
表の社会には、“ギルド”。――主に魔族を狩る役割を担う機関が有って、裏の社会では“暗殺・護衛”を担う機関がある。
表は人を護るために魔族を狩る。
裏は人を護るために人を狩る。
二つの機関の意向は全く違う。
当然衝突が起こる時が有る。
その為の緩衝材、折衝役が必要なのだ。
「人より強いんなら自分の身くらい、自分でまもれば良いのに。」
ぼそり。とそう零すと、引きつった苦笑が返ってきた。
「貴族の面子を立てて置いたほうが、何かと便利なんだよ。」
暗殺・護衛機関である僕等を蔑視する人は少なくない。
だから気に食わなくても面子を立てる。そうしたら、一応、角は立たない。
僕等の機関に良く依頼する癖に、貴族と言うものは酷く虫がいい。
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