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詳しい日程を聞くと、マスターが少し微苦笑を浮かべた。
「…?。」
なんだろう?。
「ごめんね。貴族の護衛なんて引き受けてくれるのは、フィーラル位なんだ。―――他の人達の殆どは自制出来ずに貴族を殺してしまいかねない……。」
それだけ、貴族に何かしら因縁や怨みが有るのだろう。
「………今回のパートナーは?」
デルタが良いけど……、今回は無理だろう。
デルタも貴族に相当な怨みが有ったはず。
詳しくはしらないけど。
「デルタだよ。」
「……自制。出来るの?」
―――いざとなれば、僕が彼を斬るけれど。
言葉の裏にそう含ませ、そう問う。
「出来るだろう。――出来て貰わなくてはいけないからね。」
デルタは、【鴉】でも僕に次いで強い。
相当の戦力を失うのは痛いだろう。
だけど。
「……いくらデルタでも、マスターの意向に添わない場合、斬る。」
「フィーラルッ!」
いつもの舌足らずの口調ではなく、冷たい事務的な声でフィーラルが言うと、滅多に声を荒げないマスターが、咎めるように鋭い声でフィーラルの名を呼んだ。
「…なに?」
そう言うとマスターは眉を下げた。
「簡単に仲間を斬るなんて言っては駄目だよ。」
「……?」
意味が解らない。
裏の社会ではマスターが全て。
マスターの命に背いた者には、例外なく死を。…でしょう?。
言葉は柔らかかったけれど、マスターが僕に最初に教えたルール。
それを守って、何が悪いの?。
マスターが座る机に手をついて言う。
「ねぇ。ますたー……。僕はますたーも、でるたも、好きだよ。だけど、裏の社会では、規則が全て。ますたーが全て。それに背いた者には、相当の死を。それが最初に僕がますたーに教わったこと。」
「!。」
マスターの目が大きく開く。
「そのきそくを守って咎められるいわれはないよ。―――だって、それが【鴉】や【緋月】、裏社会が定めたルール。……でしょう?」
その規則が無ければ、裏社会の秩序、統制は保てない。
だってこの裏の世界は全てが信頼なんてものは殆ど無いようなものだから。
――それを忘れた者に待つのは、大抵死しか無いのだから。
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