貴族

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雨が降って、身を包むコートに雨粒が叩きつける。 ふと地面を見ると、赤黒い血溜りが出来ていた。 「………。」 ぬるりと不快な感触を手に感じ、ゆらりと其処に視線を落とすと、その手は血に塗れていた。 「あぁ…。そうか」 今は任務遂行中だった。 デルタはぼんやりとした風に呟いて、血溜りから少し視線を外し、その斜め前を眺める。 其処には、身体の中身を曝け出して絶命している人間。だったもの。 デルタはそれに向けて、炎弾を放ち、死体を燃やし、死体を消した。 「【任務完了】。」 そう呟いて、その場から消えた。 「任務完了しました。」 「お疲れ様。」 マスターに任務終了の報告をしてデルタが部屋を後にしようとすると制止の声が掛る。 「何?」 「貴族の護衛任せて大丈夫?。」 マスターがそう問うと、デルタの空気が冷たく張り詰める。 その目には憎しみがちらつく。 「問題ない。“貴族”としてではなく、“護衛対象”と見れば………。」 一見大丈夫そうに見えるが、デルタは恐らく酷く不安定だろう。 だからこそフィーラルをデルタの、監視・制御役として置く。 フィーラルが彼を上手く制御出来れば問題は無いのだ。 「マスター。今回のパートナーは?」 「フィーラルだよ。」 デルタは予想していたのか、そうかと呟き。 「解った。」 そう言って今度は本当にマスターの部屋から出て行った。
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