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闇が可笑しそうに問い掛ける。
汝が進むは茨の道。
幾つもの生を奪い、一体汝は幾つのの屍を積み上げた?。
血に染まりし道を、更なる闇へと、歩を進める。
―――――その先に何を目指す?
「……………。」
ふわりと意識が浮上する。
眠っていたらしい。
ふるりと頭を振って辺りを見回すと、電気を付けていなかった部屋は薄暗く、大分日が落ちていた。
「……。」
それにしても。
おかしな夢だ。変な問い掛け。
第一、殺した屍の、数なんて。
「おぼえてない。」
目指すものは?
「―――馬鹿馬鹿しい。」
無いよ。そんなの。
マスターに従って、対象を壊し、殺すだけ。
“駒”として、道具として。
ほんとにおかしな夢だ。
そう思いながら、フィーラルはソファから身体を起こす。
ぺたりと足を床につけると、ひんやりと冷たい。
立ち上がり、目を擦って時計を振り仰ぐ。
「………。」
そして、おもむろにキッチンのあるスペースに歩いて行き、設置してあった戸棚の引き出しに手を突っ込んだ。
「どれにしよ……。」
呟きながら、引っ張りだす。
すると小さな箱の様なものを取り出して、蓋を開けると、丸い小さな錠剤が入っていた。
フィーラルはその大量の錠剤を無造作にざらりと掌に乗せ。
「いただきます。」
とまた呟いて口に含み、ばりぼりと、噛み砕く。
箱には小さな文字で【栄養剤】と記載されていた。
そしてものの数分で飲み込むと。
「ごちそうさま。」
と呟いて、箱を戸棚の引き出しに戻した。
どうやらフィーラルは食に対し、関心が全くと言って良いほど無いようだ。
如何に手軽に栄養を摂取出来るかに重点をおいている。
その短すぎる食事を終えると、キッチンから廊下に出て、自室に戻り、棚から本を引き抜きベッドへと座り込んだ。
「…。」
無言で本の文面に視線を滑らせていく。
フィーラルが本を読み始めてから一時間ほどたった頃、玄関にフィーラルの良く知った気配が有った。
「!。でるた。」
本を捲る手を止めて、玄関へと歩く。
「お帰り。」
ぎゅっと抱きつくと。
「ただいま。」
と返事が返ってきて、ゆっくりと抱き上げられる。
顔を見ると、何時もの優しい笑みだったが、何処か影がある。
「フィーラル。話が有る。」
そう言った。
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