貴族

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その表情は辛そうで、哀しそう。 そんな顔で言われれば、話等聞かなくても解るよ。 どうせ任務の事だ。 「任務のことでしょう?」 リビングのソファーに腰を下ろしてそう言うと、デルタは頷いた。 「フィーラル。頼みがある。」 「……なに?」 これから僕が言われるだろう言葉も、僕が返す言葉も予想が出来る。 デルタが机に手をついて言う。 「今度の任務で、俺の抑えが利かなくなったら―――。」 「――殺せ。って?」 デルタの言葉にフィーラルは、被せて言う。 「あぁ。」 デルタは重々しく頷き、フィーラルを見る。 ほら…、やっぱり。 フィーラルは答える。 「痛みも感じさせない程、一瞬で首を、刈ってあげる。」 嫣然と微笑し、躊躇いなく。 「有り難う。フィーラル。」 「マスター意向にそむき、マスターのやくに立たない駒はいらないから。」 【鴉】の構成員は、マスターの駒。 皆が皆、そう思ってる訳では無いが、実際のところはそうだ。 「その通りだな…。」 デルタはフィーラルの言葉に複雑な、顔をした。 「……話は終わり?」 フィーラルはデルタの表情に、不思議そうな顔をして、ソファーから立ち上がり、デルタに訊く。 「あぁ。メシ食ったか?」 「うん。食べた。」 そう言ってフィーラルはキッチンの棚を指差した。 「あー…。ちゃんとしたモン食え。」 「あれ。栄養バランスはとれてるよ?」 「あー、そう言う意味じゃなくてな。」 微妙に食い違う会話。 確かにフィーラルの言うように、フィーラルが食べた栄養剤は必要最低限の栄養は摂る事が出来る。 1日、行動するための栄養分は摂れるが、それ以外のところに栄養がいかない。 現にフィーラルは年齢の割に酷く小柄だ。 しかも、そんなものばかり食べていたら、身体を壊しかねない。 デルタは一つ溜息を吐いてフィーラルに訊く。 「腹減ってねぇの?」 「うん。」 その言葉にまたデルタは溜息を吐く。 フィーラルの頭をくしゃりと撫でて、言う。 「そんなんじゃ、いつまでも小さいままだぞ?」 「…ん。別に小さい方がいろいろとべんりだからいい。」 どうでも良いと言いたげにフィーラルは言い切った。
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