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あれから私は夏奈ちゃんの背から降り、自分の荷物を持ってみんなの列に加わった。
その列の最後尾で私は夏奈ちゃんと歩いていた。
それにしても、目の前の光景には圧倒される。
すぐ近くには広々とした海が広がり、その周囲には緑の山々が広がっていた。おまけに夕焼けが、さらにその美しさを引き立てている。
私はその光景に目を奪われ、さっきまでの眠気も吹っ飛んでいた。
「柚希ちゃん、体調は平気なの?」
目を奪われていた私に、天使のような声が降り注ぐ。見なくても分かる。麻姫先輩だ。
「せ、先輩!はい、大丈夫であります!ご迷惑かけてすみません!」
どんな綺麗な光景でも、麻姫先輩の前では全てが劣る。
私はハキハキした声で応えた。
「それは良かった。それにしても、私が額を触ったばかりに…。ごめんなさいね?」
いえ、あながち間違ってないですが、断じて先輩のせいではありません!!
私の乙女心に火がついただけなんです。
「麻姫先輩のせいじゃないですよ。偶然あの時、私がどうかしてただけですから」
主に精神的なところがね。
私はにっこりと先輩に笑顔を向け、先輩の美しい姿を脳内フォルダに焼きつけていた。
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