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涼しげな風。
夏の風物詩とも言える虫の音色。
そして…シャンプーのいい香りが私を包む。
誰かに抱き締められている。そんな気分になる。
これは…夏奈ちゃんの香り…?
そんな心地よい中で私は目が覚めた。
ん?夏奈ちゃんの香り?
「ん…?ふぇい!!?」
驚くべき事に、私は夏奈ちゃんの背に乗せられていたのだ。つまり、おんぶされている訳だ。
「あ、ちょっと柚希、暴れないの!」
慌てふためく私にもっともな意見を浴びせる夏奈ちゃん。
だが、目が覚めたらおぶられていたなんて驚くのは当たり前だ。
「な、何で!?何で夏奈ちゃんにおぶられているの!?」
「はぁ…。柚希、倒れたまま起きない生徒を一人車内に残して行けますか?」
呆れたような口振りで夏奈ちゃんは言った。
「も、もしかして…着いちゃったの?」
恐る恐る、夏奈ちゃんに尋ねる。
すると夏奈ちゃんはコクリと頷いた。
なんて事だ。私が天国にいた間、バスは目的地に着き、一向に目の覚めない私を夏奈ちゃんは背負って運んでくれていた訳なのだ。
「柚希、何か言う事は?」
顔を見なくても分かるくらい、夏奈ちゃんはご立腹のようだ。
「ごめんなさい…」
合宿が始まってさえいないというのに、早速私は迷惑をかけていたらしい。
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