初任務

8/9
前へ
/120ページ
次へ
小屋の中に入るとメーベルの兄は逃げようと試みたが、 「ようやく気付いたか。この小屋の周りにはすでに結界を張らせてもらったよ。」 ギュスターウが残忍な笑顔を浮かべながら、退路を断つ。 「異端審問官、テオドール・リュッケの名において命じる。真実の鏡よ。彼の者の真実の姿を写したまえ。」 テオがそう叫びながら鏡をメーベルの兄へと向けた。 「ブラド兄さん!」メーベルが絶叫するその目の前では、メーベルの兄、ブラドの姿がみるみるうちに異形の姿に変わっていった。 「やはり、悪魔に取り込まれていたか。ギュスターウ、ユリアン。行くぞ。こいつが今回の元凶だ。」オーランドがそう号令を出し、自らも切り込んで行った。 ギュスターウも強いと思っていたが、オーランドの強さは群を抜いていた。 ユリアンは自分もと剣を抜いた。 「止めてください。あれは兄さんなんです!私のただ一人の家族なんです!」メーベルが必死に訴える。 それを聞きユリアンは躊躇った。 確かに悪魔に憑かれた人は悪魔を倒せば元に戻ることができるが、メーベルの兄のように完全に融合していては救うことができない。躊躇したユリアンにブラドの触手が迫る、 その時、目の前の触手が消えた。いや、三四郎が間に入り、見えない程の速さで切ったのだ。 「迷ってる暇はありません。彼の命を救えないならせめて魂だけは救ってやるべきです。」と三四郎は決意を促す。 だが、「僕は…それでも、メーベルのお兄さんを救ってあげたい!」ユリアンは動けない。 いや、動かない。無数の触手がメーベルに迫る。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加