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小屋の中に入るとメーベルの兄は逃げようと試みたが、
「ようやく気付いたか。この小屋の周りにはすでに結界を張らせてもらったよ。」
ギュスターウが残忍な笑顔を浮かべながら、退路を断つ。
「異端審問官、テオドール・リュッケの名において命じる。真実の鏡よ。彼の者の真実の姿を写したまえ。」
テオがそう叫びながら鏡をメーベルの兄へと向けた。
「ブラド兄さん!」メーベルが絶叫するその目の前では、メーベルの兄、ブラドの姿がみるみるうちに異形の姿に変わっていった。
「やはり、悪魔に取り込まれていたか。ギュスターウ、ユリアン。行くぞ。こいつが今回の元凶だ。」オーランドがそう号令を出し、自らも切り込んで行った。
ギュスターウも強いと思っていたが、オーランドの強さは群を抜いていた。
ユリアンは自分もと剣を抜いた。
「止めてください。あれは兄さんなんです!私のただ一人の家族なんです!」メーベルが必死に訴える。
それを聞きユリアンは躊躇った。
確かに悪魔に憑かれた人は悪魔を倒せば元に戻ることができるが、メーベルの兄のように完全に融合していては救うことができない。躊躇したユリアンにブラドの触手が迫る、
その時、目の前の触手が消えた。いや、三四郎が間に入り、見えない程の速さで切ったのだ。
「迷ってる暇はありません。彼の命を救えないならせめて魂だけは救ってやるべきです。」と三四郎は決意を促す。
だが、「僕は…それでも、メーベルのお兄さんを救ってあげたい!」ユリアンは動けない。
いや、動かない。無数の触手がメーベルに迫る。
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