よみがえる記憶

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6月のある暑い日。いつもと同じ帰り道を自転車をこいで家へと向かう一人の男子学生がいた。 彼の名は木山文男(きやまふみお)。高校1年生だ。まだおろしたての夏服に身を包んでいた。 文男の前には同じ高校の生徒と思われる学生がいた。数人が横並びになって楽しそうに話ながら帰っていた。 「おそいなぁ‥。ぬくか」 心の中でそうつぶやき文男はスピードをあげた。前を行く生徒を軽々とぬき、しばらくしてスピードをおとした。 ペダルを後ろ向きにこぎゆっくり進む。車道を車が通るだけで周りにはだれもいない。 ふいに横をみると花壇があった。草や花が咲きほこり、蝶が舞っていた。 そんな風景を見ながら和んでいると、真上で小鳥が鳴き通り過ぎて行った。空を見上げると雲が流れている。 そんな何気ない風景が文男の記憶の扉をたたいた。           
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