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門番は腰が抜けた男を別室へ連れ出してまた戻ってきた。
「ごめんね~。んじゃ、僕が検査官の代わりをしようかな。えっと、書類に必要事項をお書きください」
と言い門番は手続き書をもう一枚千兵に渡した。
すると少女は、
「千兵ヨロシクね」
と、千兵に囁く。
千兵は黙って頷いた……が、その眼はさっきまでとは違う。
千兵はキラリと目を光らせた。
そして次の瞬間、
千兵はものすごいスピードで書類を書き始めた。
早く、かつ丁寧な字で……
その間、少女は先程の門番と会話を弾ませていた。
「門番さんなのに、入国の審査官さんの仕事も出来るんですねー」
「あ、いやぁ、元々僕はこっちの仕事だったから。そうでなくとも、手続き手順のマニュアルがあってその通りにやれば誰でも出来る仕事なんだけどね……。お、もう書き終わったのか!」
その時間、わずか一分半。
その短時間で、千兵は自分と少女の二人分の手続き書をびっしりと書き上げた。
「わあ~っ!早い早~い!」
「これは驚いた。とても書くのが早いんですね」
千兵は不敵な笑みを浮かべながら書類を門番に渡した。
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