54人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「ハハハ……ちょっと待ってて下さいね」
門番は少し笑いながら事務所の方へ戻っていった……
しばらくすると、門番は戻ってきた。
千兵とリリィは、門番から何かがパンパンに詰められた袋を渡された。
中を開けると何やら小さな果物がたくさん入っていた。
「何ですかこれは?」
リリィは門番に聞いた。
「それは桜桃の実ですね。この国では『サクランボ』って呼びます。丁度今収穫シーズン真っ盛りでして、僕の先輩がたくさんくれたんですけど量が多くて僕らだけじゃ食べきれなくて……是非貰っていって下さい」
「ありがとうございます。千兵、食べてみて」
千兵は果実を一つ取り茎のようなへたのような物を果実から取ると、ためらう事なくそれを口に入れた。
「あ」
「甘くて美味しいです!」
「はははは!口に合って良かったよ。……あ、それと――」
ガリッ!
門番が何か続けて言おうとした瞬間、何か堅いものが砕ける音が、廊下中に響き渡った。
「…………」
「ゴメン、種があるってこと言うの忘れてた……あはは」
門番は苦笑いを浮かべる。
「む~……」
千兵は、苦虫を噛んだような顔をした。
「……まぁ、とりあえず歩こうよ!」
三人は、出口に向かって歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!