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「……や?」
物乞いは首をかしげた。
当然だ。『や』の一言だけで考えが伝わるわけがない。
リリィは姿を表さずに、心の中から千兵に言った。
「千兵!一言しか言えないんだから!紙とペン!紙とペン!」
千兵は納得した表情で、スケッチブックとペンを取り出し、足でサクランボの袋を取られないようにがっしりとガードしながら何かをスケッチブックに書くと、スケッチブックを物乞いの顔の前に突き付けて書いたものを見せた。
スケッチブックには、丁寧かつ綺麗な字でこう書いてあった。
『人様から貰った食べモノは、人にあげずに本人が全て食べるのがスジってもんでしょ?』
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