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ずかずかと物乞い達が蠢く道を歩いていく千兵。
ふと一度だけ、呆然と立ち尽くすさっきの物乞いの方を振り返ると、物乞いと目を合わせて不敵な笑みを浮かべながら、
グーサインを出してみせた。
「……?」
何がしたいんだよ、とでも言いたげな顔を物乞いは浮かべた。
そして千兵が先ほど乱暴に何か書きなぐり破り捨てた紙切れを拾い上げ、広げてみる。
そこには太く黒い字で、乱暴かつ力強く、こう書かれていた。
『伊達に旅をしてきてない!』
物乞いは更に唖然とした。
が、すぐに理解した。
『自分は長いこと旅してるからこういった自分の身を護ることは慣れてる。だから心配いらない。ノープロブレム』という意であると。
「へえ。久々に面白そうなヤツが来たな……ま、まずはお手並み拝見しようか」
威風堂々歩いていく千兵の後ろ姿を見ながら、物乞いは薄ら笑いを浮かべて呟いた。
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