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千兵は老人の方を向くと、敵意剥き出しの鋭い眼光でじっと老人を睨み付ける。
老人は狼狽えることなく、むしろ少し和やかな顔で千兵に問いかける。
「なあ兄ちゃんよぉ。悪いことは言わねぇ。そのサクランボを置いてってくれねぇか。わし等みたいな物乞いはいつも腹が減ってるもんでねぇ」
千兵は首を横に振り、否定の意を示した。
その時千兵は周囲を囲む物乞い達から視線が送られていることに気づいていた。
しかし千兵もまた狼狽えることなく老人を睨んだままだった。
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