物乞いストリートの戦い

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「兄ちゃんよ、ここに暮らすわし等みたいな物乞いはいつも腹が減っとるんじゃよ。そりゃあ国から食べモンやら住むところやら服やらは最低限支給されちょる。だけどもな……」 老人は今にも獲物に飛びかかろうとする獣のような目で睨む千兵をよそに続けた。 千兵も何かを堪えるようにして黙って老人を睨んだまま。 しかしながら千兵は、 周りの物乞い達が自分を取り巻くように静かに密かに動いているのも、 それを助けるように老人が次々に話を広げて時間を稼いでいる事も、 既に気づいていた。 「……じゃから詰まるところな、そのサクランボを置いてってはくれないか?そうでないと彼らは力ずくでぶんどりに来るだろう。な?悪いことは言わねぇ。置いてけ」 千兵は首を横に振り、否定の意を示した。
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