物乞いストリートの戦い

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「ぐぅぅ!」 右手指先に走った激しい痛みに千兵は思わず唸り声を上げ、思わず手にした段平を手放した。 まずい! 千兵はそう思うと同時に再び痛む右手で段平を掴み直そうと、自分から遠ざかる段平を追うように腕を伸ばす。 小柄な男は千兵のその隙を突くように、今度は飛び上がって千兵の無防備な腹部を右足の爪先で蹴飛ばす。 完全に不意を突かれもろに腹部に蹴りを食らった千兵はその瞬間に段平の回収を諦め、腹部の痛みと吐き気をギリギリ堪えながらも、今度は空中で無防備になった小柄な男の脇腹に右手でボディブローを放った。 小柄な男は勢いで軽く飛ばされ、地面に落ちると腹を抑えて悶えた。 これであと…… と千兵に考える隙を与えずに、今度は千兵の背中に別の物乞いが前蹴りを放つ。 2~3メートル程千兵は前によろけるとそのまま地面に手をついて勢いを止めて、身体ごと背後を振り返る。 しかし千兵は手遅れだった。 千兵が振り返った時には既にその物乞いがそのまま今度はドロップキックを繰り出していたのだ。 千兵はまたもそれを胸部にもろに受け、勢いで飛ばされた。
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