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「千兵」
「千兵!」
「千兵!!」
自分の名を呼ぶ声で千兵が目を覚ました時、両手足首を踏みつけていた大柄な男はそこにいなかった。
目の前に巨塔の様にそびえ立っていた鶴嘴を持つ大男達は視界の中に無く、代わりにそこにはただ雲一つ無い青い空が広がっていた。
自分は……死んだ?
いや……死ぬってこんなに意識がはっきりしてるのか?
何がどうなってんだか……
千兵はただただ頭の中だけで現状を把握しようとしたが考える程に混乱していく。
が、
「千兵!起きたんなら返事してよ!」
混乱する千兵の思考がどこからか聞こえる声によって一瞬で整えられた。
同時に生きていることを実感して、千兵はほんの少しだけ安堵した。
「聞いてる?」
視界の端から誰かが千兵の顔を覗いた。
それは少し不機嫌そうな顔をしたリリィだった。
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