物乞いストリートの戦い

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「そのくらいで命を諦めてるみたいだけど。千兵やっぱ弱いな~」 リリィは茶化すように言うと何事も無かったかのようににこりと微笑んだ。 千兵は何か言いたげな顔をしながら左手で頭を掻いた。  ……あれ? 千兵はふと何か気になり、素早く立ち上がった。 あまりに素早く立ち上がった結果、 「うわ!ちょ……ぐぇ!」 リリィは文章で表し難いくらいに前後左右に揺さぶられて大変なことになった。 「うへぇ~くらくらするよぉ……。いきなりどうしたの千兵」 リリィは目を回しながら訊くが、千兵はそれを無視しひたすら周りを見渡していた。 その顔はまるで独りで地獄に堕ちたような、顔面蒼白。 「え?ちょ……大丈夫?千へ……」 リリィは千兵に声をかけている最中にその理由に気づくと、同じように顔色を変えた。 それは千兵とリリィにとってどうしようもない事だった。 頭を押さえ近くに横たわっていた大柄な男が 立ち上がろうとしていた小柄な男が 老人の物乞いが 最初に話しかけてきた物乞いが その他大勢の物乞い達が その場の全ての人間がリリィに注目していた。
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