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【ジアポーネ共和国】……
《人口二億五千万人余りの小さな先進国。数年前の世界大戦までは『ジアポーネ帝国』として他の国々とは全く関わらない独裁政治を展開していたが、世界大戦敗戦後に『共和国』となって世界の国々と関わりを持つようになり、今となっては――》
手にしたパンフレットの文章を最後まで読まず、青年はパンフレットから目を離し前方の景色を眺める。
見渡す限り緑の広がる小高い丘の頂上に立った青年が見たものは、
目下に広がる緑の大地の少し下に、大きな白い扉のような門。そしてそれの左右に果てしなく伸びる、大きな白い壁。
壁は伸びるにつれて遠くに向け湾曲し、それと同じく壁と同色の屋根がドーム状に果てしなく張られていた。
故にその内側の様子は見ることは出来ない。
青年はもう一度手元のパンフレットに視線を移す。
パンフレットに載っている写真は、青年が見る光景と概ね一致したものだった。
またパンフレットから目を離し目の前の光景を見直すと、
「つ……」
青年は呟いた。
「え!?着いた!?早く!早く行こっ!!」
どこからかの声も言った。
青年は大きな門へ向かって、軽やかに小走りで丘を下っていった。
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