物乞いストリートの戦い

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「ちょっと待て!まだ勝負は終わってないだろ!」 男の声が千兵達へ向け叫ぶ。 千兵が振り向いてみると、叫んだ声の主は一人の男の物乞いだった。 「さっきまでの闘いっぷりはどうした!やられてこのまま逃げるのか!?」 千兵はこのまま物乞いの主張を聞いていようか街へと足を進めるべきか、少し迷うが後者を選んだ。 「おい!本当に逃げるのか!この℃¥$¢£%#&*!」 男は千兵とリリィにはよく解らない言語で罵ったが、千兵は何も聞いていないかのように前を向き直し街へ歩き出す。 が、 「千兵、ちょっと止まって」 今度はリリィが千兵を引き留めた。 「後ろ向いて。皆の顔見てみ」 千兵は面倒臭そうな顔をしながらもう一度振り向く。 景色としては先程と何ら変わりはない。 しかし千兵は周りを取り囲む物乞い達の表情を見るとようやく事の重大さに気づいた。 今まで千兵が見てきた、リリィを見て恐怖する人間達のような表情をした者はその場に一人もいなかった。 その代わりに彼らは獲物を狙う鷹のような目で千兵達を睨んでいた。
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