物乞いストリートの戦い

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 あの小さな物乞いも、  大柄な物乞いも、  この場にいるどの物乞いも、俺みたいな変な奴を見ても逃げなかった。  リリィだって、奇妙な自分達の見られても逃げようとした俺に乗っからずに立ち止まらせてくれた。  俺だけだ。  嫌だからって  辛いからって  逃げようとしたのは俺だけだ。  どうして、いつも俺ばっかり…… ぺチン 「いっ……」 「千兵、また今『理由なき鬱モード』になってたよ!」 不意にリリィに頬を叩かれ、何か深刻な事をずっと考えていた千兵は我に帰った。 千兵自身は大分時間が経ったように感じたが、状況は先ほどと何ら変わりはない。 何か変わっているとすれば…… 『――それでも逃げるっていうのか!』 物乞いのスピーチの話題くらいだろう。
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