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千兵とリリィを差し置いて、小さな物乞いはスピーチを続けていた。
随分長いこと語った物乞いの話も終わりを迎えようとしていた。
『それでも逃げるって言うならぁ……』
一呼吸置く。
大きく息を吸い込み、
『こっちはそれでも全力で君にかかっていくのみ!逃げるな青年!逃げても無駄だ!』
千兵は着々と戦闘準備を整えていた。
千兵は鞘に収まったままの段平を構え、深呼吸を始める。
リリィも真剣な顔になっていた。
両手を組んで伸ばし、指の関節を鳴らす。細く長いリリィの指から木の枝を折るような小気味の良い音が鳴る。
「千兵、さっきと同じ。鞘から抜いて斬っちゃダメだからね」
リリィは千兵に話しかける。
「でもさっきの戦い方見ると向こうは何でもありの本気だったから……こっちも本気で行くよ!」
千兵は静かに頷く。
そして、
『皆、かかれぇぇぇぇ!』
小さな物乞いの声と共に、千兵とリリィを取り巻く物乞い達が怒号のような威勢の良い声を上げながら一斉にかかってきた。
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