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「行くよ!千兵!」
「むッ!」
リリィは千兵に呼びかけると顔の前で手を組み、人差し指だけぴんと立てる。
それに答えた千兵は段平の刀身を寝かせ、柄が顔の横に来るように構える。
リリィは走ってくる敵のおおよその数を目で数え把握すると、目を閉じて二秒間ほど意識を人差し指の先に集中させて念じる。
念じ終わるとカッと目を見開き、人差し指を向かってくる物乞いの一人に向けると叫ぶようにこう言った。
「来い!ふーたろう!」
リリィの声と共に、周囲の物乞い達は異変を感じ取った。
先程まで感じるほど強くなかった風が人々の間を縫うように強く吹き始める。
その風はリリィの真正面に集まり、ちょうどリリィの人差し指が指す方向につむじ風が起こった。
それだけではない。
そのつむじ風が今度は圧縮され球状になった。その部分の空気が歪み、形状がよく分かる。
空気球はなお吹いてくる強い風を取り込んで膨らんでいき、五芒星のように型どられていく。
更にその先端が膨らんでいき……
空気球だったものは人型へと変化した。
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