物乞いストリートの戦い

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「おい!また来るぞ!」 どこからともなく声が聞こえると、リリィに向かってくる物乞いの集団は左右に避け始める。 一人も乱れることなく綺麗に左右に分かれていく物乞い達だったが、 「遅い!」 リリィが造り出した人型空気球は、真正面にまだ残る人間たちのすぐ近くまで一瞬で詰め寄り、彼等の足元の地面を右腕にあたる部分で殴るような動きをした。 その瞬間、空気球に溜め込まれていたのであろう空気が一気に放出され、竜巻が空気球の周りに発生する。 その風力は凄まじいもので、空気球のすぐ近くの物乞い達は瞬時に竜巻に弾かれ、数メートル後方に吹き飛ばされた。 「アレに近づくな!あの子に集中しろ!」 どこからか聞こえた声に従うように、左右に分かれた物乞いは再びリリィに向かい始めた。 「うぇー、やっぱタフだね……千へ――ぐえっ!」 手を構えたまま口をへの字に曲げたリリィの身体は、何の前触れもなく左方向へ180度回転する。 次の瞬間にはリリィが今まで向いていた方向を、段平を持った千兵が向いていた。
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