物乞いストリートの戦い

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―――――――― 千兵とリリィが半回転する少し前。 ちょうどリリィが人型空気球を造り出した時ほどであろうか。 リリィが数多多くの物乞いを相手にしている一方、 千兵はたった一人の老人と相対していた。 それはこの戦いの火蓋を落とした、顔に大きな傷を持つあの老人であった。 老人の背後には、呆気にとられた表情をする大勢の物乞いが立ち止まっている。 正確に言えば、先頭にいる老人が右手を肩の高さまでまっすぐ上げて広げ、数多多くの物乞い達を制している。 千兵と老人の背後にいる物乞い達は、老人の出現に驚き困惑した。 老人が物乞い達を制したことに対してではなく、まるで瞬間移動でもしたかのように、何の前触れもなく目の前に現れたことに対してである。
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