物乞いストリートの戦い

36/43
前へ
/74ページ
次へ
「まあまあ。こんな老いぼれを見て驚きなさんな、兄ちゃん」 談話をするかのような口調で話す老人の声を聞いた途端に、千兵は落ち着きを取り戻し、鞘に収まったままの段平を握る手に力を込め直す。 同時に千兵は、強い向かい風を感じた。風というより、空気が吸い寄せられるような風圧であった故に、千兵はそれがリリィの魔法によるものであると理解した。 「ふん、ちょっとやそっとじゃ狼狽えなくなったか。ちょいとは進歩した、ってとこかのぉ」 左手に持った粗末な木の棒を器用にくるくる回しながら、軽やかな足取りで老人は千兵に歩み寄る。 「じゃが兄ちゃんよ。そんなもんでわしに戦いを挑もうというのか。それぁ愚かな話よ」 老人は棒を回すのを止めて、左手でしっかり持った棒の先をピッと千兵に向けた。 「もしそれでもわしに挑もうというのなら、10秒後のわしの居場所でも当ててみなされ」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加