物乞いストリートの戦い

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「な!」 千兵は蹴りを中断し、左に身を翻し先ほどの向きとちょうど反対方向へ振り向く。 同時に背後から何者かの呻きが聞こえた気がしたが、千兵は大して気にしなかった。 振り向いた先に老人はいなかった。  どういうことだ?  あの爺さんは何処行った?  ……いや、考えるのは後だ!  今は…… 「千兵後ろ!近すぎて私じゃ無……ヴェッ!」 リリィが言い終わる前に千兵は勢いよく振り向き、先ほど千兵が押し返した男と相対した。 鍬を構え直し千兵に向かおうとするところを、千兵は一気に距離を詰め男の下腹部へ段平の鞘の先で強烈な突きを放つ。 男は呻き声をあげ、その場にうずくまる。 「千兵!後……ろぉぉう!」 左回転で振り返ると、老人が視界の左方向に消えた。 千兵は更に左に向く。 向いた瞬間、とても老体から繰り出されるとは考えられないスピードで、老人は段平を持つ千兵の手首を力強く叩いた。
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