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「いっ!」
手首に衝撃を受けると共に電流が流されるような激しい痛みを感じ、千兵は思わず段平から手を離す。
その時千兵の思考が一時停止。頭の中が真っ白になった。
やられた。
またか。
また、俺は……
バランスを崩し、今にも尻餅をつくというとき。
千兵の見る全ての景色がゆっくりに感じられた。
身体が後ろへと倒れていく。
千兵は絶望感を抱きながら、スロー再生される世界に独り取り残された気分になっていた。
だが、
「おいおい兄ちゃん、いい加減にしろよ」
その世界は、千兵独りのものではなかった。
「また心折れて倒れて気ぃ失って、生きれる可能性を潰すのか。ちっさい男だのぅ」
千兵の心が一瞬にして、絶望への一方通行から揺れる。
「少しは本気出して生き死に関係なく、がむしゃらにやってみんかい。若いんじゃから」
瞬間、スロー再生の千兵の世界は終わりを告げた。
それと同時に、気づけば千兵の段平は老人の持つ木の枝とつばぜり合いを繰り広げていた。
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